帯状疱疹は痛みを伴う厄介な病気で、高齢者に特に影響を及ぼします。そこで、予防のためのワクチンが重要な役割を果たしています。現在、日本では2種類の帯状疱疹ワクチンが利用可能です。それぞれの特徴とコストについて知っておきましょう。
1. 阪大微生物病研究会(BIKEN)の生ワクチン
- 背景: このワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」)は、大阪大学微生物病研究所の高橋理明教授が発明したもので、BIKEN(大阪大学発のベンチャー企業として1934年に誕生)によって水痘(水ぼうそう)の世界初の予防ワクチン(1986年9月に承認)」として、また世界初の定期接種ワクチンとして製品化されました(2014年10月)。
- 水痘ワクチンの定期化で得られた効果
水痘ワクチンの定期接種化によって、小児の水痘患者が激減した結果として、次のようなことが確認されています。
- 水痘の発生率が低下した(45.6%減少)
- 抗ウイルス薬の使用率が低下した
- 医療コストが低下した
参考資料:水痘ワクチンの定期接種化で子どもの水ぼうそうの発生率が大きく減少 ~抗ウイルス薬の使用率や医療コストの減少も明らかに~.2023. 国立研究開発法人・国立成育医療研究センター
阪大微生物病研究会の乾燥弱毒生水痘ワクチンを帯状疱疹ワクチンへ
小児が感染した水痘ウイルスは症状が消えた後も体内に潜伏し、終生体にとりついて離れない。高齢期になると、多くの人は免疫力が低下し、潜んでいるウイルスの活動を抑える理科らが低下し、ウイルスが再活性化し、体に帯状の発心を形成する症状(帯状疱疹)が出ることがある。このように、小児のころに感染したウイルスそのものが高齢期になって発症した帯状疱疹の原因となっている。
そこで、小児のころに高い有効性が認められていた燥弱毒生水痘ワクチンを帯状疱疹を予防するワクチン(すなわち、潜伏水痘ウイルスの再活性化を抑えるワクチン)として申請し、「50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防」に対する「効果・効能」の追加承認がされた(2016年3月)。これが、帯状疱疹ワクチンとして使われている。
- 接種回数と費用: 回数;1回 費用;7,000~10,000円程度(医療機関により異なります)
- 効果: 高齢者の帯状疱疹予防として有効
2. グラスコ・スミスクライン(GlaxoSmithKline, GSK)の不活化ワクチン(Shingrix)
参考資料:不活化帯状疱疹ワクチン
背景: 高橋教授の弱毒性ワクチン株(高橋教授が水痘患者から分離したウイルス:Oka株)が英国のウェルカム(Welcome)社に譲渡されていました。2000年、Welcome社はGSK社となって引き継がれました。GSKはこのOka株の遺伝子配列に基づき、ウイルス表面に分布しているgE糖タンパク質を抗原とした組換えサブユニットワクチン(不活化ワクチン)を開発しました(日本において、2018年3月23日に50歳以上の成人を対象として、2023年6月26日に帯状疱疹の発症リスクが高いと考えられる18歳以上を対象として承認を取得)。
接種回数と費用: 回数;2回 費用;2回で40,000~60,000円程度(医療機関により異なります)
効果: 研究によれば、不活化ワクチンの方が生ワクチンより若干効果が高いとされています。
メッセージ
以上にように、現在、帯状疱疹の予防ワクチンとして「生ワクチン」と「不活化ワクチン」の2種類が使われています。接種する回数や費用などをきちんと確認したうえで、ご自身の状況に合ったワクチンを選びましょう。接種については、かかりつけ医など医師に相談することが大切です。